たとえば仕事や家事の合間に、ちょっと口さみしくてチョコを一つ。
夜ふかしの途中に、ついスナック菓子をつまみながらスマホをチェック。
食べる量は少しだけ。でも、気がつけば何時間も何かを口にしていた……。
そんな経験、ありませんか?
「お菓子を食べるとむし歯になる」と言われはしますが、必ずしもそうではありません。
今回は、私たちの歯に何が起きているのかをお話ししつつ、歯の健康がぐっと守られやすくなる方法についてお話ししていきたいと思います。
食べると口の中で何が起きているの?
この話は最終的に「むし歯防止」につながっていくのですが、そもそも、どうしてむし歯になるのでしょうか?
その話から始めてみましょう。
まず、食事やおやつを食べると、私たちの口の中では「酸」が発生します。
これは、食べ物の糖分をエサにして、口内の細菌が活動を始めることで起きる自然な反応です。
そして、この酸は、歯の表面を覆っているエナメル質を少しずつ溶かしていきます。
これを「脱灰(だっかい)」といいます。
しかし、私たちの体はよくできていて、この酸を唾液が中和してくれるようになっています。
そして、その働きにより、溶けかけた歯は修復されていきます。
これを「再石灰化(さいせっかいか)」と呼びます。
つまり、脱灰と再石灰化は、食後のたびに口の中で交互に繰り返されている自然なサイクルなんです。
「時間」がむし歯のリスクになる
つまり、「お菓子を食べること」自体は悪いことではありません。
むし歯のリスクとなるのは、「だらだら食べ」なのです。
ポイントは「時間」です。
何かを食べるたびに、口の中は酸性になり、脱灰が始まります。
そして、食べ終わったあとしばらくしてから、ようやく中和され、再石灰化の時間が始まります。
さて、ここで、もしもちょこちょこ何かを食べ続けていると……
そうです。この「酸性の時間」がずっと続いてしまい、再石灰化する暇がないまま、歯の表面はじわじわと傷んでいってしまいます。
つまり、「食べる物や量よりも、頻度や時間」が歯に与える影響を大きくしてしまうということです。
「タイミング」を決めてみる
仕事の合間に、頭を切り替えるための甘いおやつ。
気持ちを落ち着かせたい夜のコーヒーとチョコレート。
親しい人と一緒に食べるアイス。
好きな音楽を聴きながらのポテトチップス。
食べることは、栄養だけではなく、心の支えにもなっています。
だからこそ「食べるな」ではなく、「食べる時間を決めてみる」ことを試してみませんか?
食事やおやつのタイミングを決めるだけで、お口の中のサイクルが安定します。
他にもできることが…
他にも、お口の中のダメージを減らすために、いくつかできることを並べてみます。
・飲み物を見直してみる
甘い飲み物をちびちび飲み続けると、口の中がずっと酸性になりやすくなります。
お茶や水に切り替えるだけでも大きな差になります。
・食べたあとの「ひと呼吸」
すぐに歯みがきできなくても、水で軽く口をゆすぐだけで、酸を洗い流す手助けになります。
甘いものやおやつを楽しむときは、「時間を決めて」「一気に食べて」「そのあとは口をゆすぐ」だけでも十分に歯を守る習慣になります。
自分のペースで、無理のないように
私たちの生活は、時に忙しく、時に乱れます。
食事のタイミングを決めていても、どうしても守れない日も出てくると思います。
そんな時は、無理をしなくても大丈夫です。
少しの意識や工夫だけで、歯は少しずつ守られていきます。
食べることは、生きること。
食べることを我慢するのではなく、食べながらも歯をいたわることができる——
そんな付き合い方が、きっとこれからのあなたの健康を支えてくれると思います。